その声はバッチリ志乃の耳に
届いていたらしく、思いっきり睨まれた。
「あぁ?誰がチビだって?
俺、一応 知夏よりデカイから」
と、睨んでくる志乃だが……
「……たった2cmでしょ」
「うっせぇ!」
そう、私と志乃の身長差は
たったの2cm。
まだ中2だけどさ?
他の男子は、ほとんど160前後な訳で……ι
(↑ここまで言ったら志乃が
激怒するから言わないけど)
いわゆる、
私の彼氏はチビなんです。
「今は小さいかも知れないけど見てろよっ!!
俺は180cm超えるんだからな」
うーん。
それは難関じゃない?←
「せめて160にしなよ」
私が苦笑いで言うと
なぜか志乃は不機嫌になる。
すると急に私の顔に志乃の顔が近づいてきた。
キスする寸止め……。
「見てろよっ。
知夏の身長なんて、俺が余裕で抜いてやる!知夏が俺を見上げるくらいな」
「……っ///」
そんなカッコイイ台詞、
こんな近距離で言わないでよ…………
期待……しちゃうじゃん。
「知夏、わかった?」
「ぅ……うん」
そんな事を言われたら
頷くしかない。
私が返事をすると、満足したのか志乃は眩しいくらいに笑った。
意地悪でバスケ馬鹿で
すごく生意気だけど
私は
そんな志乃を
心から想ってるんだ。
どうか、
ずっとこのまま……
志乃と一緒に
いられますように――――。
ずっと志乃の隣は
私でありますように……。
「起立ー礼っ」
「「さよーなら」」
帰りのHRが終わると同時に
志乃は体には不釣り合いなほど大きなエナメルを背負って
教室を出ていった。
これは、いつもの事。
でもさ?
「一緒に体育館行くくらい
いいじゃん…」
志乃が練習終わるまで
体育館の2階で待ってたいのに……。
私は溜め息を溢しつつも
後から体育館へ向かった。
私が体育館に着くと、
もう志乃は着替えていて
シュートを打っていた。
わぁぁ……
志乃、カッコイイ……
さっきまで怒ってたのに
志乃がシュートを決めただけで胸がキュンてなった。
はぁ……。
私って単純かもι
そんな事を考えながら
2階へ行こうとすると誰かに後ろから手首を掴まれた。
「ちなっちゃん♪」
「木山っ!!」
私をこんなアダ名で呼ぶのは
“木山 彰太”。
身長はバスケ部の中で
1番高い176cm。
中学生にしては
やっぱり長身だよね…。
私は必然的にも木山を見上げた。
すると優しく頭を撫でられた。
……まるで子犬のように。
「本当ちなっちゃんは
可愛いなあ♪
ちっちゃくて…子犬みたい」
そう言って木山は
私の頭に頬をすりすりしてきた。
「離してよ、木山!!!」
「えぇーヤダ。
ちなっちゃん良い匂いする…」
こらこらこら!
私の髪を嗅ぐな、変態!!
私が離れようとする前に
木山は離れた。
それは
私と木山の間に飛んできたボールのせいだ。
そのボールを投げた人物は……
「あぁー悪ぃ。シュート外した」
「…志乃。ゴールは上だろ?
なんで横に飛ばすかなあ?」
志乃も木山も黒いオーラを
出しながら笑ってる。
いや……笑ってるけど
笑ってない!!?
「おい、知夏」
ビクビクする私に
いきなり声をかける志乃。
「な…なに?」
「お前、邪魔。
早く2階に行けよ」
…………はい?
「し、志乃に言われなくても
行くわよ、バーカ」
なんで志乃が
こんなにも怒ってんの!!?
「知夏しってる?
バカって言う方がバカなんだぜ?バーカ」
「~~~~っ(怒)」
あっかんべーされながら
そんな事を言われ、
私は何も言い返せず上に上がった。
私が2階に着くとコーチらしき人が体育館にやってきて、
みんなが周りに集まった。
「3週間後、長谷川学園と
練習試合をする」
コーチの言葉に
みんながざわつき出した。
「長谷川学園って……。
県大会1位の!!?」
「それ無理だろー」
みんなが口々に言う。
弱音を吐いちゃうくらい強いのかな……
「それでだ。人数が多いからスタメンとベンチを決めようと思う」
その言葉に
辺りはシーンと静まり返った。
「…どうやってですか?」
木山の声が静まった体育館に
響いた。
「1週間後に1on1を行う。
その結果で
スタメンとベンチを決める」
「それって勝てばスタメン入りなんですか?」
と、志乃が言う。
やっぱり志乃は
周りに比べて小さい。
でもコーチを見る眼差しは
誰よりも強い。
……そんな気がする。
「勝敗も参考にするが、
どんなプレーをするかで
スタメンもベンチも決めていくつもりだ」
それって……
もし1on1で勝ったとしても
いいプレーしないと
選ばれないってこと…?