行くところもないから家に帰ったら、メイドさんやお母さんに、すごく驚かれて心配された。

私は「大丈夫だから」ってそれだけ言って、部屋に閉じこもって泣いた。


ずっと泣いてたら、いつの間にか寝ちゃってたみたいで、目が覚めると天窓から月が顔を出していた。

まるで、抱きしめてくれているかの様に、月の光が私を照らしていて、なんだか少し、気が楽になったように感じたのを覚えてる…。



暗い部屋の中、月の光の他にピカピカと光っているものがあった。


『……携帯…。』


恐る恐る手にとって開いてみた。

メールが43件に電話が16件…。
一緒に勉強するはずだった友達全員からメールや電話が来てた。留守電も。


その中で1番多かったのは…やっぱり翔ちゃんで。

心配してくれたのかなって、嬉しく思う反面、辛かった。
あんな光景を見たのに、未だに期待しちゃってる自分が、嫌だった。


その日から私は、翔ちゃんを避けた。他の友達からのメールには返信したけど、翔ちゃんには一切返さなかった。


大好きなご飯もろくに食べず、外出さえもしない。



冬休みで良かった。
…なんて思ったりもした。


けど、そううまく彼に会わずに済むわけもなくて…。