「だから、プリント忘れたのあんただけっつってんの。聞こえなかった?」
「聞こえてるし、うるっさいなあ!! そんなもん、持ってねえし。」
「はあっ!?」
さっきからずっとこんな調子だ。
「また、梓と美琴の喧嘩だよー」
「飽きないねぇ、二人も」
二人の言い争いが日常茶飯事なのでクラスメートは基本呆れてるか、野次を飛ばしている。
梓と美琴は本当に対照的で犬猿の仲と言う言葉が当てはまる。
佐伯梓(サエキアズサ)は、周辺の区域で指折りの不良だ。
カールした明るい茶髪に白、金のメッシュ。
耳には無数のピアス。
長い髪の隙間からみえるのは首もとに彫った、アゲハ蝶のタトゥー。
気崩した制服。
“いかにも”といった容姿で言葉遣いも悪い。
性格も自己中心的な部分やナルシストな部分もあるので、口答え出来るのは彼女の兄か、美琴の二人だけだった。
一方で、
高槻美琴(タカツキミコト)は頼れる代表委員で成績優秀、皆の信頼も厚い。
と、いうのは先生の勘違いで実際は、
クラスメートをその強気で喧嘩っぱやい性格と気迫で支配している。
が正しい。
そして、それに対抗出来るのが梓な訳だが。
美琴は一見、艶やかな黒髪と綺麗な顔立ち、キチッとした制服の着こなしたに真面目そうな風貌をしている。
それ故に、ギャップにショックを受ける男子も多かった。
唯一、二人の似ている所と言えば、強気で喧嘩っぱやい性格だろう。