「まぁ…一瞬だけどな。」
「一瞬?」
「あぁ、偶々繁華街をうろついてる時喧嘩の罵声が聞こえたんだよ。」
「へぇー…」
「その時に見に行ったら…黒い人影のやつが一人だけ立っていてゆっくりこっちを見たんだ…。あの目は闇姫だよ…。絶対…。」
「…喋りかけなかったの?」
「あぁ、喋りかけようとしたけど…又あの時みたいに妖艶な笑みで微笑んで…闇に消えちまったんだ…。」
「…そうなん…だ…」
私にはそう言うしかなかった。
「又会いてぇなー…」
柚斗は海の方を見て静かに呟いた。
私には『又会えるよ』なんて言葉は絶対言えなかった。
黙って聞こえてない振りをするしかなかった。