俺は痛みで頷くことしかできなかった。



『すっげぇ傷だな…。』


「…。」


『もうすぐ救急車来るから安心しろ』


「…。」


俺は、一体誰なのか気になって最後の力を振り絞って上を見上げた。


その瞬間…


唾をゴクンとのんだ。



長い黒髪…。

女…?

俺を見ている目は闇のように真っ黒だった。


俺はゾクッと体を震わせた。



『あ、さっきの奴らはちゃんと潰してやったから安心しろ。』


「…ぁ。」


名前を知りたくて聞こうとしたら口の中が切れていて痛みで喋れなかった。


『ふっ』


男か女か分からないその人は俺の聞きたい事が分かったのか妖艶に笑って


『闇姫』


と言って何処かに去って行った。


その時の俺は『闇姫』だと言われても族の事にあんまり詳しくなくてなんのことか知らなかった。