「愛美ちゃんの想い人、だろ…?」


ドクン…


「それ、は………」

思わず下を向く。

何故だろう…前にいるのは雅樹なのに…。


それなのに…前が見れない…。


雅樹は腰を低くして優しく言った。

「でも、佐奈は誠也が好きなんだろ?」

ゆっくり頷くあたし。

「ずっとずっと好きだったんだろ?」

また頷くあたし。

「でも愛美ちゃんの好きな奴だったんだな…?それで我慢してんだな…?」

今度も頷くと涙が頬を伝って床に落ちた。


誠也が好きだった。

小さい頃からずっとずっと好きだった。

やっと会えたのに…。

何で…何で…。


力が抜けて床に座り込む…。

そんなあたしを、雅樹はそっと包み込んだ。

「辛いよな……大丈夫、大丈夫だからな、佐奈…」

「まさ…き…」

あたしは雅樹の服をギュッと握った。

涙が染み込んでいく…。

雅樹はあたしの頭をそっと撫でると、あたしを落ち着かせながら聞いた。

「佐奈、佐奈の好きって気持ちは愛美ちゃんより小さいか…?」


「あたしの、好きって気持ち…?」

「そう」

あたしは涙をぐいっと拭うと雅樹をまっすぐ見た。

「誰にも負けない!」

「よしっ、流石俺の姉ちゃん♪」

雅樹はニッコリすると、あたしの頭をよしよしって感じで撫でた。

「子供扱いするなぁ!」

「子供だろー」

雅樹は少しおどけてあたしの頭をくしゃっとさせた。

優しい優しい、思いやりの笑顔。

「でも、気持ちが大きいんだったら諦めるなよ?佐奈は笑ってねぇと不細工なんだからな?たまには頼れ?」

「不細工じゃないし!」

あたしはむくれながら反論した。