『好き』

『え……?』

彼女はまっすぐ俺を見る。

『だから、誠也が好き』

『え?え?マ、ジで?』

『うん……あの、付き合っ……』

『勿論ッ!!!』

俺は彼女に抱きついた。

彼女は恥ずかしそうに、けど、幸せそうに笑う。

それは俺も同様。

ずっとずっと好きだった女の子。

初めて好きになった女の子。

その女の子から告白された俺はとても幸せだった。


彼女の名前は………





澤野サヤ……。




そう、アヤの妹だ。

長いストレートな髪はいつも一つに縛っている。

身長は少しチビ。

更にドジ。

そして泣き虫。


でも、そんなサヤが大好きだった。



幸せになった…中2の秋。

『誠也っ、帰ろう?』

『ああっ』

放課後は必ずサヤと下校。

隣りにはいつもサヤがいる。


当たり前の毎日…。


デートもキスも、初めて一つにもなった。


そんな幸せを味わっていた俺達に……運命は残酷だった。





『ねぇねぇ誠也っ』

『ん〜?』

『もうすぐ誕生日だよねっ』

『あーそういえば…』

誕生日の事をすっかり忘れてた俺。

どうせ親とか仕事で海外だしな。

息子の誕生日くらい帰って来いよな。


ゆっくり以前親が帰って来た時の事を思い出す。



………やっぱり帰って来んな。

説明しよう。

誠也の両親は非常識だが物凄い親馬鹿なのだ。


『ちょっとぉ、誠也聞いてる?』

サヤが拗ねる。

なんか可愛い。

『悪い悪い。で?何だって?』

『だーからぁー誠也のお誕生日にデートしよっ』

『お、いいなそれ。じゃあ、そうするか!』

俺もそれには賛成だった。


この先、どうなるかなんて知らずに…………。