誠也はアヤさんをまっすぐ見た。

その瞳には

 悲しみ

 苦痛

 決意

 恐れ

が表れていた。


アヤさんはニッコリすると誠也に手を振って去って行った。


「………………」

誠也は無言。

とても気まずそうにしている。

あたしはゆっくり口を開いた。


「あの、さ」

「……!あ、ああ」


さっきの事って何?

何があったの?


「あたしに…話して?」

「えっ……?」


あたしは大きく息を吸う。


「さっき話してた事、話して?」

「……ッ、それは、ダメだ」


「…どうして?彼女じゃないけど……幼なじみじゃん。力になれそうなら、なりたい」


あたしはじっと誠也を見た。

ずっと…ずーっと……。

誠也はいきなり近くのベンチに座り、頭をくしゃくしゃさせた。

そして俯いて……話し出した。


「………出来れば佐奈には言いたくなかったんだけど…。……仕方ない……こんな雰囲気、よくないしな。……座って」


あたしは誠也の横に座った。


聞きたい。

出来るなら、助けたい。

そんなあたしのわがままが、誠也を苦しめる事になるなんて…思いもしなかった。