あたしはびっくりし過ぎて声が出なかった。
でも息を飲んでゆっくり頷いた。
「あたしも…しっかり考えたいことあるの…あたしにも時間が欲しい」
すると愛美も強く頷いた。
「あたしも……」
「俺も…」
亮も気まずそうに便乗する。
一瞬、本当にあるのかなぁ?とか思っちゃったけど、真剣な顔だから、あるみたい。
って、亮に失礼かな。
誠也は苦笑いした。
「全員かよっ」
皆に笑顔が戻った。
愛美が天井を見ながらつぶやいた。
「何だか…ずーっと笑ってなかった感じ…」
あたしも、亮も、誠也も天井を見た。
真っ白なタイルに、所々汚れがある。
「白いキャンバス…」
「えっ?」
亮の言葉に皆が振り返る。
誠也は分かったみたいで、また天井を見た。
「確かに白いキャンバスかもな……」
え?え?
状況を上手く飲み込めない愛美とあたしはポカーンとしている。
亮がクスクス笑いながらあたし達を見た。
「思い出の始まりって事だよ」
「「思い出の始まり?」」
愛美とあたしの声がハモる。
すると誠也が優しくほほえんだ。
ドキッ…!
やっぱりカッコイイ…。
愛美もそう思っているのか、誠也を見たままボーっとしている。
「人間の中身ってさ…最初は何だと思う?」
誠也の問い掛けに頭をひねる。
うーん……。
うーん………。
…………わかんない。
すると愛美はひらめいたように言った。
「ゼロ!つまり白!!」
「正解」
あ、成る程。
って、何だかあたしだけバカみたいな感じが…。
一人落ち込んでいると、亮が天井を見上げた。