ありがとう、亮、誠也…。


ふと、あたしは愛美を見た。

俯いて黙り込んで、隅に座っている。

「まな…」

「愛美……」

あたしが愛美を呼ぼうとすると、先に誠也がはっきり呼んだ。

愛美はカタカタと震えている。

あたしは愛美をそっと抱きしめた。

「さ…な……?」

「辛かったね愛美……。苦しかったね…悲しかったね…。大丈夫…あたしはいるからね……」

愛美は一筋の涙を零した。

「ウッ…アァ…佐奈ぁ…佐奈ぁぁ…!ごめ…ごめんね…!!」

「愛美…」

お互いにきつくきつく抱き合う。

あたしは愛美の頭を撫でた。

亮と誠也はそれを苦笑いして見ている。

「まぁ、仲直りしたならよかったよ」

「…だな」

誠也は何だかちょっと暗い。

愛美はそっとあたしから離れて涙を拭いた。

少しずつ誠也と亮に近付き、頭を下げた。

「ごめんなさいっ!」

「愛美ちゃんは悪くないよ。悪いのは左藤の奥さん♪ねー?」

「あぁ…ごめんな愛美」

誠也は空気を読んでボケを受け流して愛美に謝った。

隣で亮がつまんねぇのー。といった顔で誠也を見ている。

あぁもう…亮って空気読めないなぁ。

愛美はまた泣き出した。

「違っ…あたし…ウッ…皆を…傷つけ…て……!ごめ…ごめんなさい…!!」

「愛美、謝らなくていいよ。俺が優柔不断だから悪いんだ」

そう言うと、誠也はあたしと愛美をまっすぐ見た。

そして頭を下げた。

あたしはびっくりして硬直してしまった。

愛美も同様、動きがない。

「佐奈、愛美…俺はしっかり決める。だから…時間が欲しい。俺が終止符を打たないといけないから……」