愛美はぐしゃぐしゃになった髪とよれよれになった服という格好で近づいてきて、服を弱々しく掴んだ。

振りほどくことが…できない。

愛美は顔を上げた。

涙でぐちゃぐちゃだ。

「あた…しね…好きなの…凄い…本気…なの……ごめ…んね誠也……」

「愛美……」

気持ちがぐらぐら揺れる。

俺は佐奈が好きだ。

でも愛美も守りたい。

こんな優柔不断な俺でごめん。

どちらかを傷つけないといけない選択…。

俺は選べるのか………。

さっきの行動を愛美に謝ろうとしたとき、愛美はグッと強く服を握ってすぐ離し、勢いよく離れた。

「ごめん!!!!!」

愛美が走り去っていく。

「愛美っ!」

急いで追い掛ける。

ガチャガチャッ!

屋上のドアがさびついてなかなか開かない。

「くそっ………!」

全力をかける。

バンッ!!

「開いた!」

すぐさま走る。

どこだ…愛美……。

『ごめん!!!!』

違う…俺が謝らないといけないんだ。

ごめん…ごめんな愛美…!

階段を走る…下りる…走る…下りる。

階段のつきあたりに差し掛かった。

愛美がいる。

その先には…亮と……佐奈!?

何か愛美と佐奈が近くに……。

何して……。

のんきに考えていると、佐奈が突き飛ばされた。

佐奈の手は手すりに届かない。

「危ない!!!」

「きゃぁぁぁぁっ!!!!!!」

「佐奈ーっ!!!!!」

佐奈の悲鳴の後に、亮の叫び声。

俺は階段の手すりから飛び降り、佐奈を抱きしめた。