カシャンッ

「……ッ」

俺はフェンスに愛美を追い詰めた。

声が低くなる。

「協力って何だよ」

「………………」

愛美は目をそらして口を固く結んでいる。

俺はさっき見た佐奈の涙を思い出した。

何で泣いてたんだよ。

協力って…そのせいなのかよ。

何があったんだよ。

愛美は…何をしたんだよ…!

「協力って…佐奈に何を頼んだ」

「……………………」

まだ無言だ。

愛美の手首を握る。

ガシャーン!

「きゃっ…!」

俺は愛美をフェンスに押し付けた。

愛美の髪がフェンスに絡まり、服はよれている。

でも今はそんなの関係ない。

「俺は佐奈に何を頼んだか聞いてんだよ」

「…………!」

愛美は怯えている。
どうやら今の俺はかなり怖いらしい。

「言えよ」

たとえ誰であろうと許さない。

確かに愛美は大切な人だ。

だけど佐奈も大切な人だ。

だから許さない。

俺の大切な人に涙を与える奴は。

愛美はやっと口を開いた。

「あ…たし………」

話をゆっくり聞いた。

全部聞いて、俺は唖然とした。

佐奈には前々から応援してもらっていた。

でも途中から佐奈が俺を好きなのを感づいた。

俺も好きだから俺と佐奈が付き合って、愛美は捨てられると思った。

佐奈とは軽く険悪だし、佐奈は亮と付き合ったし、愛美を抱いたけど、俺はまだ佐奈を見ていた。

そこで佐奈に嫌いだと言わせ、俺と佐奈を更に離そうとした。

どうしても俺の気持ちを佐奈から遠ざけたかったらしい。

俺は愛美の手首から手を離した。

愛美はうなだれながら黙りこくっている。

許せなかった。

でも…痛い位に愛美の気持ちもわかった。

忘れたハズの過去が、蘇る。