「誠也、一緒に帰ろうぜ」

亮が帰る支度をしながら話しかけてきた。

「悪いな、放課後に呼び出しだよ」

「なにっ!?先輩から裏庭へ来いのメッセージか!?」

俺は吹き出した。

ベタ過ぎるだろ、それ。

「違う違う、愛美からだよ」

「裏庭?」

「違うって。屋上だよ屋上」

うーん、と亮は考え込む。

「あっ!飛び降りじさ…」

「縁起でもねーこと言うとぶん殴るぞ」

「は、はいっ」

亮は硬直する。

そんなに怖いかぁ?

俺は席を立ち、カバンを持ち上げた。

「佐奈とラブラブ下校しろよ」

「いやー…佐奈いなくなっちゃって」

「先に帰ったんじゃね?」

亮はまた考え込む。

考える人かよ全く。

「はぁ〜一人寂しく帰りますよ」

ちらっと教室から外を見ると…数人の女子がいる。

絶対に亮目当てだな。

俺はニヤつく。

「寂しくはないんじゃねぇ?」

「は?どーゆー…」

「また明日なー」

さっさとその場を立ち去る。

そりゃ俺だって男なんだし、女子に囲まれたいとは思うけどさ?

今はまず屋上だし、愛美にバレたらマズすぎる。

「ふぁぁ…」

あくびしながら階段を上っていく。

最後の授業は、俺の大っっ嫌いな英語。

いや、一応できるよ?

でもさぁ…俺は日本人だし、無茶なんだよ、無茶。

あー…かったりぃー。

ったく、愛美は何を考えてんだ…?

わざわざ屋上に呼び出して。

まさかマジで飛び降りじさ……。

だーっ!!

やめんか俺!!

縁起でもないっ!!!