かちゃっ

「もしもし愛美?」

「あっ、佐奈〜もぉ何で携帯出ないの〜」

「ごめんごめん、幼なじみ来てたからさ」

「あ、初恋の?って今も好きなんだっけ?やるぅ〜」

顔が真っ赤になる。

ま、愛美〜〜!

「う、うるさいよ愛美!ていうか何の用よっ!?」

愛美はくすくす笑うと明るい声で乙女になった。

「誠也君♪」

「左藤君?」

左藤君の話かぁ…ていうかそれが幼なじみなんだよね…。

愛美は私の親友。

昔から愛美とは相談し合ったりしてた。

「好きな人、いるって?」

どうしよう…無言だったんだよね…左藤君。



でも無言ってことは、いないってことだよね?

「いないみたいよ」

「そっかぁ。じゃああたしも一からのスタートだなぁ…目指せ誠也君の彼女!」


そう…愛美は左藤君が好き。

だから桜の木で待ち伏せしてて、話すタイミング探してた。

それなのに寝ようとするんだもん!

放課後なんだから家で寝ればいいのに。


…………今まで…愛美の好きな人が、あたしと同じってことは無かった。

だってあたしはずっと幼なじみ、左藤君が好きだったから…。

それなのに、こんなことってある?

ずっと好きだった人は、めちゃめちゃカッコイイ女の子にモテモテな男の子になってて、しかも親友の想い人。

早く会えばよかった…あたしのバカ。


「てゆーことで佐奈っ、協力してねっ♪誠也君は競争率高いから頑張ってモノにしなきゃ♪」

「え、あ、うん。わかってるよ」


わかってる…。


左藤君はあたしのことなんてすっかり忘れてたんだもん。

あたしが好きでいても…意味がない。

逆に迷惑になっちゃう。

だからあたしは…


「周りの子に差をつけて愛美をレベルアップさせてあげるっ」

「きゃー♪ありがとう佐奈〜♪やっぱり持つべきものは親友だねっ♪」




左藤君を、諦める。