愛美は凄い剣幕であたしに近寄ってくる。
すかさず間に亮が入る。
「どーしたんだよ愛美ちゃん!」
「うっさい、どいて」
亮の体で愛美の表情は見えない。
でも……さっきの顔……。
今の愛美は、いつもあたしが知ってる愛美じゃない。
『あははっ、佐奈おっかしぃ〜!』
『佐奈ぁ〜お腹痛い〜』
『テスト終わったし、遊びに行こうよっ!』
あんなに素直で、笑顔で、明るい愛美が…あの愛美が…明らかにあたしに向けて怒り、もっと言えば憎しみをぶつけようとしている。
愛美の瞳にはいつもの明るさはなかった。
「うるさくねーし、どかねぇから」
亮は意地でもどかない。
あたしを守ってくれるんだね、亮…。
すると愛美はあたしに顔を向けてニッコリした。
心から怖いと思う、偽りの笑顔。
「ねぇ、佐奈聞いて?あたし、佐奈のせいで凄い苦しいの」
「え……」
「聞くな佐奈っ!」
あたしに愛美を近づけないようにしながら亮が叫ぶ。
…体が動かない。
愛美はニッコリしたまま亮を蹴った。
「………ッ!」
「亮っ!!」
亮は顔を歪ませた。
愛美の蹴りは結構痛い。
以前に武道だかなんだかやってたらしいから。
痛いはずなのに、亮はあたしを守り続ける。
あたしは怖くて動けない。
愛美は亮を蹴り続ける。
ドカッ!
「どけよ」
ドカッ!ドカッ!!
亮は苦痛に顔を歪ませながら堪えている。
やめて愛美…!
「や、めて…愛美…お願い…!」
泣きながら動けないまま頼むあたし。
愛美はクスッと笑った。
「何であんたなんかの願いきく…訳ッ!?」
ドガッ!!!
「…………ッァ!!!!」
「亮!!!!!!」
亮が崩れ落ちた。
制服には血がシミを作っている。
ひどい……!
あたしはやっと体が動いた。
亮に駆け寄る。
「亮、大丈夫!?足から血が……!!!!」