どのくらい走ったのだろう。

階段を何回も降りて、つきあたりに入った。

ドンッ!

「きゃっ!」

何かにぶつかった。

よろめきながらも人だとわかったので謝る。

「ごっ、ごめんなさい!よそ見してて…」

「………佐奈?」

「え………?」

見上げると、そこには亮がいた。

あたしの顔を見るなり驚き、心配している。

「ちょっ…何で泣いてんだよ!?」

「え…あ…こ、転んじゃって」

「嘘つけ、すり傷だってねぇじゃねーか」

亮はあたしの足を見た。

確かに打撲やこすった跡さえ無い。

バレバレだ。

でも、上手い言い訳が思いつかない。

「あ…そ、その………」

「…何かあったんだな」

亮はあたしの頭を優しくなでて階段を見上げた。

そして、はっとしたようにあたしを見た。

「まさか……愛美と誠也か…!?」

「……!ちが…誠也…は…悪くな……」

誠也と亮はよく一緒にいる。

きっと屋上に行くというのも聞いたんだ。

誠也は悪くない。

じゃあ愛美は……?

愛美は悪くないって…どうして言えないの……?

愛美はあたしの親友だよ?
悪くないに決まってんじゃん。

でも………あの瞳。

頭に次々と疑問が浮かぶ。

何でわざわざあたしに頼んだの?

何で嘘って言っちゃいけないの?

何でこんなことするの?

確かめるなんてしなくていいんじゃないの?

じゃあ何で………?

まさか……。


「まさか愛美は……あたしと誠也のあの出来事を…あたしの気持ちを…知っていた…?」

「そうだよ」

「愛美!?」

振り向くと愛美がいた。

何故か格好が乱れている。

髪もぐしゃぐしゃだ。

「愛美…それどーしたのっ!?!?」

「はっ…!どーしたの、だって?ふざけんじゃねーよ!お前のせいなんだよ!!」

「ま…なみ……?」

いつもの愛美じゃない。