「バーカッ。お前と佐奈が幸せならそれでいーんだよ」
これは本心。
でも…やっぱり心が痛い。
嫌だ……嫌だ嫌だ。
佐奈が亮と…他の男と付き合うなんて嫌だ。
佐奈の幸せを願いたいのに…。
なのに嫌だ。
多分…これは嫉妬。
この時に俺は核心した。
一刻も早く、佐奈を忘れないといけない。
佐奈はもう亮を見ている。
俺を忘れた証拠だ。
ならば俺も忘れなければならない。
「あぁ。サンキュー誠也」
亮は優しいほほ笑みを浮かべた。
幸せだと言わんばかりだ。
悲しいのか…。
心がズキズキ痛む。
俺は自分に問う。
−俺は佐奈が好きか?
……好きだ。
−佐奈を幸せにしたいか?
……したい。でも…。
−でも、何だ?
俺には…出来ない。
だから…だから……。
「佐奈を幸せにしてやれよ〜?」
「おぅっ!お前も愛美ちゃん大事にしろよ?でも…本当にもう佐奈のことは…」
好きじゃないのか?
そう言われる前にニコッとした。
「ばぁーか。当たり前だろ?実はさ…この間、愛美を抱いたんだよ」
「マジでかよっ!?すっげぇラブラブじゃん」
「だろ?だから佐奈はもう好きじゃねーよ。俺はもう愛美が好きなんだ…」
嘘だ。
まだ佐奈が好きだ。
佐奈が俺をちらっと見た。
一瞬視線が絡み合う。
ドキッ…!
胸が高鳴る。
顔が赤らんでしまいそうだ。
俺はすぐに目線を背けた。
好きだ…好きだ…。
君が好きだ。
溢れるこの想いが……君にだけ伝わればいいのに。
嘘なんだ…賭けてなんかいない。
なぁ…あの時、君は何を思ってた?
俺は……ずっと、いたたまれなかった…………。