「ねぇねぇ誠也っ」

「んー?」

今、俺は愛美と部屋にいる。

もうすぐ夏休みも終わりだ。

そのせいか愛美はかなり俺の家に来る。

親は大概は仕事でいねぇから二人きり。

しかし未だに愛美にはドキドキしない。

「最近、愛美って呼んでくれるよねー♪嬉しいっ♪」

「うーん…呼び捨てになっただけだぞ?」

「でも嬉しいのー。誠也の彼女って感じがするっ!」

「どんな感じだよ」

苦笑いしながら愛美に突っ込む。

いつもいつも、こんなたわいもない話をしている。

愛美からキスを求められればキスもする。

でも俺からしたいとは思わなかった。

毎回毎回付き合ってんのと同じ展開。

必ず俺から切り捨てる。

あっちから切り捨ててきたことは一度もなかった。

けれど罪悪感はなかった。

恋愛に飽きてきたみたいだ。

『誠也っ♪』

佐奈の笑顔が頭に浮かぶ。

…佐奈は違った。

キスもしたくなった。

でも苦しめるならしたくない。

こんな恋愛は、繰り返してはいけない。

だから、引くことにした。

佐奈には笑顔でいてほしい。

「誠也…佐奈のこと考えてるでしょ」

「………!」

動揺した俺はひじを壁にぶつけてしまった。

あぁ…俺のバカ。

完璧バレバレ。

愛美は呆れたように言った。

「やっぱり」

「ごめん」

謝るしかない俺は頭を下げた。

愛美は勘がめちゃめちゃ鋭い。

雅樹そっくりだ。

愛美は少し間をおくと、俺の服の袖を握り、俺を見た。

悔しさと悲しさの入り交じったような顔だ。

「ねぇ、キスしてよ」

「え…」

いきなりなので流石に驚き、動きが止まってしまう。

愛美は叫びに近い声で言った。

「あたしは彼女なんでしょっ!?…ッ…してよっ!!」

「…………わかった」

愛美を引き寄せ優しくキスをする。