「ほにゃみ、ちゃな?」

夢歩ちゃんは一生懸命に穂波佐奈と言っている。

あぁ、もぅ〜本当可愛いっ!

「そうだよ〜」

「キャッキャッ♪ほにゃみ、ちゃな♪」

再びあたしが可愛いと惚れ込んでいると、亮君はニッコリした。

「ハハッ、佐奈は小さい子が本当に好きなんだな」

「うん♪あ、結局何しに来たんだっけ??」

「おいおい」

亮君は苦笑いしてあたしを見た。

まっすぐな瞳に、少し悲しさが見える。

何でこんなに明るくて優しい人がこんな目をするの…?

それは後々わかることになる。

でもその理由があんなことなんて、あたしには全くわからなかった。

「佐奈は俺に相談に来たんだろ?」

「あ、そうだった」

「忘れんなよー。あ、ここ俺の部屋。入って」

「あ、うん。失礼しまーす…」

緊張のあまり職員室に入るときのような挨拶をしてしまった。

案の定亮君は笑いを堪えている。

「もうっ、何よっ」

ちょっと拗ねる。

ベッドに座っている亮君はまだ笑いを堪えている。

「いやいや、緊張してんなぁーって」

「当たり前でしょー?あたし男の子の部屋とか家とか滅多に行かないんだから」

「あれ?誠也ん家行かねぇの?」

ドキ…!

久しぶりに亮君から誠也の名前を聞いた。

誠也の家なんて行ったことないよ。

だってずっと逢ってなかったし、それにいつもあたしの家に来てたし。

気まずい雰囲気に気づいたのか、亮君は話を切り替えた。

「つーか佐奈の格好可愛いじゃん、今日」

「え、そう?ありがとう〜」

『ん?いや………可愛い』

ズキッ!

誠也が言ってくれた言葉を思い出す。

あの時、凄い幸せだった。

ねぇ誠也………。

あたしはまだ誠也が好きだよ。

可愛いって…亮君に言われてもドキドキしないよ。

誠也の本音が聞きたいよ。

ねぇ…隠さないでよ……。

誠也…………。