「愛美ちゃんは…誠也を好きでいていーんだよ…」

「え…………?」

雅樹…!?

思わず雅樹の肩を掴む。

顔が少し引きつっている気がする。

「どういう風の吹きまわしだ?雅樹」

「………」

雅樹は無言で俺を見つめ、そして肩にある手を振り払った。

まるで放ってくれと言っているかのように。

俺はまた肩を掴んだ。

「おいっ雅……き……」

「……ッ……」

俺は硬直してしまった。

雅樹の肩は震え、頬には一筋の涙が伝っていた。

何で………。

すると雅樹は俺をまっすぐ見た。

「誠也は佐奈を守らないんだろ……?」

それは……。

守りたい…守りたいよ…でも……。

「…………」

結論が言えない俺。

そんな俺を察したのか、雅樹は話を続けた。

「突き放すなら…愛美ちゃんを守れ。そんで佐奈には誰も本当のことは言わない。亮さんもですよ」

「……わかってる」

亮は気まずそうに返事をした。

鮎川はまだ少し納得していない様子だ。

ここは…俺が決着つけないといけない…。

責任を負うのは当たり前だ、左藤誠也っ!!!

軽く深呼吸をして鮎川に目線を移す。

「鮎川…ちょっと時間いいか?話、ある」

「…………うん、わかった」

「亮と雅樹は…どーする…?」

雅樹はくるっと背を向けた。

「佐奈んとこ…戻る」

「わかった…。亮は…」

「俺は友里(ユリ)と千紗子(チサコ)と来てるから…ちょっと戻るわ」

友里と千紗子は亮の妹で、アイドル好きの双子の女の子だ。

あいつらと来てたのか…。

「わかった。また連絡する」

「あぁ…じゃーな」

亮はいつのまにかいなくなっていた雅樹を少し気にするように帰った。

二人きりになった鮎川と俺は無言のままだ。