家に帰ると、疲れと罪悪感と後悔が一気に押し寄せた。

実は勝手に一人で帰ってきてしまった。

切れた唇は血が固まっている。



佐奈と離れて、しばらく経ってから、何故か雅樹が俺のとこに来た。

しかも亮と一緒に。

亮と俺は従兄弟だ。

だからさっき呼んだ。

なのに何で雅樹まで…?

「どーしたんだよ雅樹?亮といつのまに知り合いになったんだ?」

しかし雅樹は答えない。

そして亮は俺を見て唖然としている。

雅樹は下を向いたまま俺のすぐ近くに来た。

何だか雰囲気がおかしい。

「雅樹?」

そう雅樹を呼んだ時だった。

バキィッ!

左頬に走る痛み。

そして口からは血。

殴られたと理解するのに、少し時間がかかった。

「いきなり何すんだよ!」

雅樹に怒鳴ると、雅樹はやっと顔を上げた。

その表情は怒りに満ちていた。

思わず息を飲む。

「テメェこそ何してんだよ」

雅樹は俺のTシャツの襟元を掴んだ。

さっき着替えてよかった。

って、そうじゃねぇ!

雅樹はまた俺を殴った。

俺も殴り返す。

雅樹は後ろに倒れ込んだ。

しかしすぐ立ち上がる。

「ふざけんじゃねぇよ…」

「理由言えよ!いきなり殴ってくんな!」

俺には理由がわからなかった。

すると雅樹は更にキレた。

「ふざけんな!お前のせいで、佐奈がどんだけ苦しんだと思ってんだ!?賭けただと?誰とだよ!」

雅樹はまた俺を殴る。

賭けたなんて嘘なんだから、賭けた人なんている訳がない。

「誰と賭けたんだよ!テメェの考えてることなんてすぐ分かるんだよ!!何で好きなのに佐奈を突き放した!!何で愛美ちゃんと付き合った!!!!」

そしてまた殴ろうとする。
その拳を今回は避けて捕まえた。

すると雅樹は力が抜けたように、その場に崩れ落ちた。

「ごめんな雅樹……。俺は佐奈が好きだ…」