雅樹は私の言葉を遮って紙を渡した。

開くとメールアドレスと電話番号が書いてある。

「これ、何?誰の?」

「亮さんの」

「は?」

何で亮君の?

雅樹はまだ目をそらしている。

絶対なんか隠してる。

「辛くなったら頼れってさ」

「そーなんだぁ…」

やっぱり優しいなぁ。
って、あれ?

「雅樹、手、どーしたの…!?」

「へっ?」

雅樹の手は傷だらけだ。

しかも血がついている。

多分、他人の血。


まさか…。


「まさか雅樹、亮君を殴ったの!?」

「ちげーよっ!貝で切ったんだよ、ついてんのは貝の血」

な、何だ貝かぁ…。

よかった〜。

「よかった〜誰かとケンカしたのかと思ったよ」

雅樹はまたビクッとする。

「そ、んな訳ねぇだろ」

絶対隠してる。

あたしは立ち上がり雅樹と無理矢理目線を合わせた。

「何を隠してんのー?」

「べ、別に何も?」

「もーいい加減に…」

しなさいよって言おうとした時に電話がかかってきた。


着信アリ 〔愛美〕


急いで通話ボタンを押す。

「もしもし愛美?今どこにいんの?誰かと一緒なの?海の家来れる?」

『質問攻めするな〜。今は一人だよ?今そっち向かってるー』

「そっかー。ていうか愛美の用件は?」

『んー?いや、ちょっと佐奈に電話したくなった』

「あはは、何それー。あ、来たじゃん」

通話終了ボタンを押して愛美に駆け寄る。

愛美は化粧がボロボロになっていて、思わず吹き出してしまった。

「愛美、あんた顔ヤバイよっ!」

「えぇ!?そんなに?海入ったからかなー」

愛美は恥ずかしげに顔を隠した。

この時、皆のことをよく見てればよかった…。