ドキンドキン…

佐奈といると胸が苦しくて切ない。

佐奈が顔を覗き込んできた。

視線が絡み、思わず赤面。

「誠也熱ある?顔赤いよ?」

「いや、何でもない」

佐奈から離れる。

何だ、この気持ち…。


もしかして……。


「…好き…なのか…?…佐奈が……」

佐奈に聞こえないようにつぶやく。

でも、俺には鮎川が…。

…好き…なのか?

俺、鮎川がかわいそうだったから付き合ってんじゃねぇの?

じゃあ俺の本当の気持ちって何なんだ…?

佐奈は…一緒にいると安心して、もっと一緒にいたくなる。

鮎川は…彼女だし、かわいそうなときとかは支えてやらなきゃって……。

「ぁ…あぁ…!」

鮎川への想いの中に『かわいそう』があった…。

つまり俺は、情けで鮎川と付き合った。

「……くそっ……!」

俺は罪悪感でいっぱいになった。

俺は……。

「鮎川と佐奈を…もてあそんだんだ………!」

ムカついた。

自分にすげぇムカついた。

岩を思い切り殴る。

悔しい…ムカつく…最低だ…俺…!

「誠也?どうかし…何で手にケガしてるのっ!?」

佐奈がさっきの音に気付いて来てしまった。

ケガ?

拳を見つめると、拳に血がにじんでいた。

…今日はケガしまくる日か?

「あー…岩殴った」

「はっ!?何で!?!?」

「いや、その…」

「訳もなく殴らない!」

佐奈は言い訳も無視して俺を見つめた。

思わず視線をそらす。

佐奈の澄んだ瞳を…見れない。

何だか気まずかった。

…意識してんのバレバレ?

「何で目ぇそらすの〜?」

「いや、なんか恥ずかしい」

佐奈は笑った。

くしゃっとしたこの笑顔は本当に可愛い。

「あははっ、何それ〜」