水が怖いって言う佐奈を浅瀬に連れて来た俺は、少し冗談を言ってみた。

緊張感がほぐれると思ったんだ。

『入れてここまで来れたらご褒美でほっぺにキスしてやるよ、なーんてなっ』

返ってきた返事は予想外だった。


『本当…?』


佐奈は本気にしたんだ。

ゆっくりこっちに向かって、後少しってとこでこけた。

慌てて佐奈をかばって倒れ込む。

ズキッ…!

やべ、背中…ケガったかも。

そんな俺を察したのか佐奈はいきなり背中を見ようとした。

驚いたのもあって、少し暴れた俺は反動で佐奈を押し倒してしまった。

「ひゃっ!!!」


パシャンッ


水に濡れた佐奈は…すげぇ綺麗だった…。

佐奈の着ているビキニから白い肌があらわになっている。

触ったら汚れてしまいそうだ。

「せ…誠也……?」

「えっ…あ…悪い……」

急いで佐奈の上からどいた。

佐奈が「きゃー!」と叫んで俺の背中を凝視した。

「どうかしたのか?」

「どうかしたのか?じゃないよ!背中っ!出血してるーっ!!!!」

あぁ、だからさっきズキッとしたのか。

佐奈は完璧にパニクっている。

「どどどどどーしよー!」

「落ち着けって…」

苦笑していると佐奈が俺の横腹を両手でガシッと掴んだ。

何する気だよっ!?!?

「お、おい佐奈?何を…」

「じっとしてなさいっ!」

「は、はいぃっ!」

佐奈の剣幕に思わずビクッとしてしまった。


うわぁ…俺カッコ悪ぅ…。


「消毒するね?」

「えっ?佐奈、治療道具持って来て…」

背中がチクンとする。

どうやら治療を始めたらしい。

しかし首だけ回してちらっと背中を見ると、佐奈が傷口を舐めていた!

「さささささ佐奈!?おまっ…何してんのっ!?」

体がすっげぇ熱い。

顔なんか火が出そうだ。

佐奈はぺろっと舐めるとニコッとした。

「唾液にも、殺菌作用あるんだよ?」

「だ、だからって…」

背中舐めるなよ〜…。

何考えてんだよ佐奈〜…!

佐奈はニコッとしながら浅瀬でくるりと回った。

「ま、いーじゃん」

…その笑顔で許したりして。