眠い目を擦りながら桜の木の反対側を見る。

いたのはごくごく普通の女子高生で、多分タメ。

つーか髪長っ!

「一年三組、穂波佐奈(サナ)」

穂波は一瞬ためらってからニッコリした。

三組………?


って、クラスメートじゃねぇか。

おいおい俺…ちょっと酷ぇだろ、それはやっぱり。

クラスメート位記憶しとかないとなぁ…。

「左藤君は結構有名だよね」

「そうか?」

「うん、イケメンだもん」

「はあ…」

イケメン〜〜〜?

お世辞も大概にして欲しいぜ。


つーか穂波って小さいな。

…失礼だな、今の。
チビって言ったことになるしな。

「あのさ、左藤君って、好きな人いる?」

「はぁっ!?!?」

いきなり何なんだよっ!?
唐突な女だなっ!

「ね、いるの?」

穂波が黒い瞳で見つめてくる。

好きな女…ねぇ…。


………………いねぇな。

つーか俺は春に隣に引越してきた幼なじみに早く会いたい。

何故か未だに会っていない。

つーかもう随分会ってねぇけど。

雅樹って言う俺より一つ下で弟みたいな存在の奴と、その姉さん。

姉さんの方は名前さえも覚えてない状態。

って、やっぱり酷ぇな俺。

俺が無言でいると、穂波は恥ずかしそうに笑った。

「あたしは…いるんだ」