誠也は苦笑しながらあたしを見た。

「…悪いな、竜乃祐じゃなくて」


「りゅーのすけ?」


って…誰?

誠也は一瞬驚いた顔をして元に戻した。

「閑野だよ閑野」

「あぁ、でも何で閑野君?」

「何でって…佐奈、好きなんだろ?」


「へっ?」


何で…って、あーー!


『あたしの好きな人は左藤君じゃないし、隣の席の閑野君が好きだから』

あれかぁー!

あたしは慌てて訂正した。

「あ、あれ嘘だよっ!パニックになってたからっ!」

「え、嘘だったのか?」

誠也はきょとんとしている。

「う、うん」

「何だ……そっか!」

誠也が何故かニコッとする。

え?え?

えーっと…何でニッコリ?

訳がわからずパニクっていると誠也は不可思議な顔をした。

「何で俺…こんなに嬉しいんだ?」

「人の恋路の邪魔が好きとか」

「うわっ…やだなぁ俺そんなに嫌な男なのかよ」

誠也はげんなりした表情になって、あたしの腕を掴んだ。

そしてニッコリした。

うっ…やっぱりカッコイイ。

「さて、じゃあまず水に慣れることから始めるかっ!」

「が…頑張るっ…」

「ん〜じゃあ浅瀬に行くか」

「はーい、コーチ」

なんてふざけながら誠也に腕を引かれて歩く。

浅瀬ってやっぱり人気少ないよね?

よかった〜恥ずかしいしねっ!

この歳にもなって泳げないなんて流石にねぇ…。

あたしって臆病だからちょっとしたことでもすぐ苦手になるんだよね…。

あぁ…情けない。

「佐奈、こっち来てみろよ」

誠也が手を離して浅瀬に入る。

水が透き通っていて凄い綺麗。

でも………。


「むっ、無理!こっ、怖い…」

足がすくんで動けない。

やっぱり綺麗でも怖いよ〜。