何故だろう……何か変だ………。


微かに漂う薬品の匂い…。

まぶたを開くと、白い天井。

「教会…?」

「違うよ、保健室」

声に驚き横を見る。

つーか教会って、どんだけメルヘンな想像してんだよ俺……。

「あれ?あ、鮎川?」

「大丈夫?誠也君」

鮎川が本当に心配そうに俺を見つめている。

よく見ると結構な美人。

「誠也君?」

「え、あ、大丈夫」

やべ、ちょっと見とれた。

モテそうだなぁ鮎川って。

体も出るべき所は出てへこむべき所はへこんでるし。

って俺はどっかのセクハラおやじか?

そんな風に心中で褒めた(セクハラ発言もあったが)のにも関わらず

「誠也君のバカッッ!」

「はいっ!?!?」

いきなり侮辱かよ!?

何だよ、せっかく褒めてやったのに。


…セクハラ発言あったけど。

「って、え…?鮎川…?」

「バカ…バカぁ…何で倒れるまで無理するのよぉ…」

鮎川は俺の手をにぎりしめて泣いている。

俺の手に重なった鮎川の手は小刻みに震えていて、その手の平にポタポタと涙が落ちてくる。

何でだ…?

俺、初対面だぜ?

それなのに何で泣くまで心配してくれてんの?

鮎川のふわふわした髪にそっと触れた。

「ごめんな鮎川…ありがとう」

鮎川が濡れた瞳をうるうるさせて俺を見る。

うっ…可愛い。

「…でも、何でそこまで心配してくれんの?俺達って初対面だろ?」

鮎川は少し俯いて赤くなってつぶやいた。

「好きだから…」

世話とかするのが?

女の子だなぁ…?

「じゃあ将来福祉関係とか?」

「違うよ、そうじゃなくて…」

鮎川が俺の手を強く握る。

何かが動く気配がしたような気がするけど、気のせいか。

鮎川は頬を赤く染めてまっすぐ俺を見た。


「私は…誠也君が好きなの」

「えっ…?」