「宅配便でーす。ハンコお願いしまーす」
「えっ?あ、はい」
予想が外れた。
俺はリビングに向かいハンコと朱肉を取り、玄関に行った。
軽く靴を履いてドアを開ける。
ガチャ…
「えーっと、何の荷物で……」
「誠也ーっ♪」
いきなり何か抱きついてきた。
勢い余って後ろに倒れる。
「何だ!?って、やっぱりお前か!!!!!」
「てへっ」
抱きついてきた物は、やはり愛美。
何だかいつもより化粧が薄い。
ナチュラルメイクってやつか?
愛美は俺から離れると、ドアを閉めた。
「上がっていい?」
「ったく、仕方ねぇなぁ」
俺は渋々愛美を上がらせる。
俺の部屋に入ると、愛美はまた俺に抱きついてきた。
少し拒否る。
「離せよ愛美…」
「いーやっ♪」
俺は少し呆れた。
しかし愛美は離れない。
仕方ないので振り払おうとすると、愛美が更に身を寄せる。
「いい加減に…」
「嫌い?」
「え?」
愛美は俺を涙目で見た。
不覚にも、ドキッとしてしまう。
「あたしのこと嫌い?あたし、誠也が佐奈みたいなナチュラルメイク好きだと思って……メイク変えたんだよ?それでもダメなの…?好きになって、くれないの…?」
「愛美………俺は…」
「分かってる。あたしと別れたいんでしょ?佐奈と、付き合うんでしょ?」
愛美は少し強気になって言う。
俺は、それが無理をしているように見えた。
愛美は俺を見つめると更に涙を零した。
「あたし…ヤダそんなの……。佐奈は亮君が好きなんだよ?誠也には、本気じゃないんだよ……?」
ドクンッ…
俺は、さっき見た光景を思い出した。
亮を見つけて飛び出てきた佐奈。
亮と抱き合っていた佐奈。
亮とキスしていた佐奈。
亮をずっと見送っていた佐奈。
俺の中で、佐奈が廻る。
佐奈の気持ちが、わからない。
何で、キスしたんだよ。
何で、あんなに愛しそうに見送ったんだよ。
何なんだよ………。