あたしは靴を脱ぎ終わるとさっさと階段へ向かった。

雅樹がバックの当たったすねを摩りながらあたしを睨んだ。

「あのなぁ、普通見えるし聞こえるんだよ」

あたしは硬直した。

「え゛。マジで?」

「マジで」

あたしはカァ〜ッと赤くなった。

体がめちゃめちゃ熱い。

「うそぉっ!?!?恥ずかしいーっ!!!!!」

「見てたぜー?周りが」

雅樹が追い討ちをかける。

うわぁー!

マジで恥ずかしいしっ!

雅樹がニヤッとした。

「う・そ♪俺しか見てませーん♪」

あたしは雅樹をちらっと見た。

「…意地悪な弟め」

「今更?」

「もっと前から知ってたよ?」

雅樹がうわぁ、と苦笑いした。

「お前こそ意地悪ぃじゃん」

「姉にお前って言わないの。お姉ちゃんって呼べない訳?」

「俺が佐奈に『お姉ちゃ〜ん』って言ったら気持ち悪ぃだろ」

あたしは階段を上りながら苦笑する。

「確かに。でも時々姉ちゃんって呼ぶじゃん」

少し振り返って雅樹を見る。

雅樹も階段を上る。

「そりゃ先輩とか来た時だろ?目上の前で佐奈とかお前とか言えるかよ」

「あ、成る程ね」

確かに、全部目上の人が来た時かも。

あたしは階段を上り終えると部屋に向かった。

すると雅樹があたしを呼び止めた。

「あ、佐奈」

「ん?」