「佐奈…」

「ぁ…」

誠也はあたしの手から手を離すと、あたしを抱きしめた。

強く、強く………。

「佐奈、好きだよ…。佐奈だけが好きだ…」

誠也は切なそうに呟いた。

あたしも誠也の腕の中で寄り添った。

心地よい、誠也の温もり………。

「あたしも誠也だけだよ…ずっと、ずっと……」

「あぁ…」

誠也の顔が近づく…。

瞳に、吸い込まれてしまいそう。

でも、あたしは誠也の唇とあたしの唇の間に手を入れた。

誠也が少し悲しそうにする。

「…嫌なのか?」

「嫌じゃないよっ!ただ、まだお互い話し合ってないから…。だから、解決するまでお預けっ」

「えー…」

「えー…じゃないの。分かった?」

「はいはい」

誠也は渋々離れるとまた手を握った。

月があたし達を切なく照らす。

あたしは、月に忠告をされた気がした。

何の忠告かはわからないけれど、確実に何かが起きる気がした。