佐奈は、ゆっくりアヤに近づくと、アヤを抱きしめた。
「佐奈、ちゃん?」
アヤは唖然としている。
だって、佐奈は泣いていたから……。
「辛かったよね…苦しかったよね……好きなのに、見て貰えなくて…ずっと…!」
「佐奈…ちゃ…」
佐奈は力強くアヤを抱きしめた。
俺は黙って見ている。
「あたしも、辛かったから………。ずっと、あたしを見てくれなくて、しかも想いが通じたのに、怯えて逃して……それは、ずっとずっと辛かったから…だからアヤさんも…!」
「佐奈ちゃ…っ!あ、たし…あたしぃ…!」
アヤは抱きしめられながら泣き崩れた。
カラン…
アヤの上着のポケットから何かが落ちた。
果物ナイフだ。
「アヤ、まさかお前…!」
俺はアヤと佐奈に駆け寄った。
アヤが力無く話し出す。
「……あたし…翔太を愛してた。例えサヤの代わりでも……。でも、やっとアヤって呼んでくれて………翌日、死んだの。」
「アヤさん………」
「でも、それは俺のせいで…」
「そう、誠也のせいで死んだって思った。だから、今日…ここに落ちてる果物ナイフで、誠也をサヤのいる所に連れて行くつもりだった。でも………違った。翔太は、多額の借金で殺されそうになってたの」
「「え!?!?」」
俺は佐奈と驚愕した。
翔太が…!?
アヤは悲しくニッコリした。
「親が使ったお金よ。翔太名義になってたの。翔太は誠也とサヤがカップルって事位知ってた。それでも誠也が自分のせいで殺されるかもしれないから、自分の恋を口実にして死んだの。誠也を守る為に……」
「………!!!!!!!」
俺を守る為に、翔太が死んだ……?
そんな……そんな……。
ガァァァンッ!!!!
俺は遊具を殴った。
「翔太はっ…俺の為に…!そんな……うっ……ぁ…あぁっ…!」
泣いた。
泣いても許されないのに、俺は泣いた。
「バカヤロ…何で…何で…!翔太のバカヤロー…!」