お弁当のおかずをパクパク食べながら、市川君は続けた。


「だから、こうやって人の作ったもの食べるの久しぶりだな。ここ最近、コンビニ弁当かカップラーメンばっか食ってたから」

「そんなの体に悪いよ!」

「でも俺、料理なんかできないし」

「ダメだよ、ちゃんと食べなきゃ……」


そんな食生活じゃ、いつか体壊しちゃうよ……

高校生って、育ち盛りの大切な時期なのに。


「先生、俺のこと心配してくれてるの?」

「当たり前でしょ……」

「嬉しい」


市川君がふいに笑った瞬間、胸がぎゅっとなった。

いつもよりも、少しだけ早く動いてる心臓。


市川君に微笑まれたくらいで、こんなにドキドキするなんて……


って、今は、ときめいてる場合じゃないよ。


「ねぇ、ご両親は?一緒に暮らしてないの?」


そんな不健康な生活してるのに、市川君のご両親は何も言わないの?


「あぁ、うん。父さんとは、中学までは暮らしてたよ」

「中学まで……?」

「俺、高校入学と同時に一人暮らし始めたから。母さんは……」


市川君は、なんだか困ったように笑った。


「母さんは、俺が小さい時に死んだんだ」