「何言って、」

「いいじゃん?はい、交換ね」


焼きそばパンをポンと置いて、市川君はあたしからお弁当箱を奪い取った。


「こんなちっこい弁当だから、先生も小さいんだよ」

「失礼なこと言わないで!」

「本当のことだろ?」


楽しそうに笑って、二つ目のから揚げを口に運ぶ。


もう、完全に彼のペース。

でも、楽しいって思ってるあたしがいる。


……大也に罪悪感を感じながら。


「ホントおいしいよ。人の手料理なんて、久しぶりだし」

「え?」

「あ、卵焼きは俺もう少し甘い方が好き。今度甘めに作って、先生?」


そっか。

市川君は、甘いのが好きなんだ……


って違う!

市川君、手料理は久しぶりって言わなかった?


「ねぇ、手料理は久しぶりって?」

「ん?あぁ……」


少しだけ間を置いて、


「俺、一人暮らししてるんだ」