市川君と美術室にいると……

色んなことを思い出して胸がドキドキしてくる。


それが気付かれないように、いつも通りを振舞うあたし。


「武藤君、いいの?いつも一緒にご飯食べてるんじゃないの?」

「圭?あいつ友達多いし、今頃他のヤツと食ってるよ。心配いらねぇって」


確かに……武藤君、友達多そう。

あたしが武藤君の顔をぽわんと思い浮かべてると……


「あ、うま」


いつの間にか、あたしのお弁当のから揚げを市川君がつまんでいた。


「ちょ、ちょっと!」

「先生、料理上手なんだ。これ、ホントにうまいよ」

「ほめても何にも出ませんっ!」


でも……ちょっと嬉しいかも……


だって、市川君、本当においしそうな顔して食べてる。


なんて思ってると、市川君は今度は卵焼きをぽんと口に入れた。


「ちょ、市川君ってばっ!」

「いいよ、代わりに俺のパン食って」


食べかけの焼きそばパンをあたしにぐっと差し出す。


「その代わり、先生の弁当俺にちょうだい?」