――お昼休み。


あたしは作ってきたお弁当を片手に、美術室に向かう廊下を歩いていた。


「あれ、先生?」


声に振り返ると、市川君が立ってる。


「どこに行くの?いつも職員室でメシ食ってなかったっけ?」

「今日は美術室でお昼。次の時間は授業もあるし、ご飯食べたら準備しようと思って」

「ふーん」

「それじゃあね」


歩き出すと、なぜかついてくる市川君。


「市川君……何でついてくるの?」

「そりゃあ、俺も一緒に美術室行くからじゃない?」

「はぁっ?」

「細かいことは気にするなよ?」

「気にするよっ!いつも学食でしょ?何でっ、」

「先生と一緒にご飯食べたいから。この前は圭も一緒だったからさ。今日は二人きりで」

「そ、そんなの無理っ、ダメっ、困るっ!」



――なんて、必死に抗議したにも関わらず。


「先生って、弁当とか作るんだ~?」


あたしのお弁当を覗いて、市川君は感心したように言った。


はぁぁ……

結局こうなるって、分かってたよぉ……