大也には、絶対知られたくない。


「……あたし…今、生理中なの……だから……」

「そっか」


こんなの、嘘だってきっと分かってる。

だけど、大也はそれ以上何も言わなかった。


「んな顔すんなよ、あかり」


あたしの頭をぽんと叩いて笑顔を作ってみせると、


「俺、べつにお前と一緒にいるだけでいいしさ」

「……大也……」

「よく考えたら、実習中にこんなことしちゃマズイよな!」


あたしが落ち込まないように……

いつも通りにふるまおうとしてくれる大也。


急に、罪悪感に胸が苦しくなってくる。


「ごめんね……」

「なに謝ってんだよ?気にすんなって」


大也のこと、少しでも裏切ろうとして。


大也がいるのに……

他の人に揺れたりして、ごめんね……


でも、あたし……ちゃんと、大也一人だけを好きでいるから。


このキスマークが消える頃には、市川君への想いも絶対忘れるから――……



堅く心に誓ったあたしだったけど。

市川君への想いは、そんな簡単に消えるものじゃなかったんだ。