「なんだよ、あかりは淋しくなかったのかよ?」


市川君の顔が、ふっと頭をよぎる。


大也と一緒にいるのに……

市川君のことなんか考えちゃダメだよ。


「ううん……あたしも、淋しかったよ」


彼を頭から追い払うように、あたしは大也の背中に腕を回した。



市川君に感じるような切なさや苦しさを、大也に感じることはない。

だけど、そばにいるだけで安心できる。


あったかくて優しいこの腕の中に、ずっといたいって、そう思う。

くすぐったくて、ふんわりした気持ちで心が満たされていく。


それが……好きってことだよね?


市川君に惹かれてるのもきっと事実だけど……

でもあたしは、やっぱり大也のことが好き。


この腕を、失いたくないんだ。



「大也……ずっと離さないでいて、ね……」


しがみつくように、大也の服をぎゅっと握った瞬間、あたしの体は床に押し倒された。


「あかり……」

「だい、や?」

「――俺、あかりが欲しい」