「赤くて…綺麗な色の狼」
「……」
ボソリと呟いた声に扇李は私の頭を撫でる
そうだ、私はあの時…歯を剥き出して今にも飛びかかって来そうな狼に出会ったんだ
見惚れてしまうくらい真っ赤な毛、そして透明で鏡みたいに綺麗な漆黒の瞳
「もしかして……」
「…………」
「あの狼って…扇李?」
扇李が狼の姿になる所はみたことがないけど、私の記憶にある瞳と扇李の瞳は似てる
そんな疑問を問う私に対して扇李は静かに頷いた
「そうだ…」
「…!」
「思い出すのが遅い」
チュと頭に唇を落としトントンと扇李は私の背中を叩く
やっぱり…あれが扇李だったんだ
あの時わたしは、怪我してる狼に近付き脚にハンカチを巻いてあげた
ハンカチを巻けば狼は歯を剥き出して怒っていたのにそれを止めて
私の手から微かに流れる血を舐めてくれた
歩いてる途中に何かで切ってしまったんだろう
そんな狼の頭を撫でて私は何にも思わずに狼さんに寄り添い"大丈夫"と言いながらキスをした
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