「うぅ……っ」


潰れたカエルみたいな
情けない呻きを漏らした
あたしに、とうとう楓さんは
ハァッと深いため息をついた。


「……承知いたしました。
もう、けっこうです」


「―――えっ?」


「旦那様からお聞きいたし
ましたが、実際いかほどの
男性恐怖症でいらっしゃるの
かを窺わせて頂いたのですが……

もう、充分理解いたしました」


「へ………」


部屋に入っても一言も話を
しなかったのは、そういう
ことだったの?


あたしは呆気にとられて、
ア然として楓さんを見るばかり。


すると楓さんは、微動だに
してなかった体をパッと
動かして、スタスタと
ソファに座ったあたしに
近づいてくる。


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