でもおかしな話だ。


我が家はいくら資産家とは
いえ、いくらなんでも執事
なんて恐れ多いものはいない。

家のことはあたしが子供の
頃からずっと、朝子さんの
ような女の家政婦さんが
してくれてる。


「朝子さんがいるのにどうして?

急にどうしたのよ、パパ?」


混乱するあたしをよそに、
パパはなぜかニコニコしながら
部屋に入り、あたしの
方へと進んでくる。

その後ろを、男の人も
ついて来た。


やがて二人はあたしの目の
前に立つと、パパが妙に
嬉しそうな顔で言う。


「心配するな。別に朝子君を
クビにするわけじゃない。

――彼の名前は四堂 楓
(シドウ・カエデ)。

今日から、お前専属の
秘書になる」


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