夜の底で、少女は嗤う。
少女の前に立ちはだかる、ぶ厚い扉の向こうを見据えながら。
「もうすぐよ、もうすぐ…」
(私は、”わたし”を取り戻す。)
漆黒の扉に手を添えれば、ヒヤリと冷たい温度が指先に伝わった。
触れられた鉛の扉は沈黙を守り、ひたすらにその役目を果たしている。
少女はまた、くすりと嗤った。
「さぁ、何をして遊びましょうか。」
扉だけの、小さな隔離されたその部屋で、少女の呟きを聞くものはいない。
それは同時に、少女の言葉の含みにも、気付く者はいないという意味でもあった。
”遊び”。
それが何を意味するかすらも。
「明日も明後日も、私は”わたし”と遊ぶの。何をしましょうか? ”わたし”は何が好きかしら?」
扉に触れていた少女の手が光を帯びる。
それはまるで、魔法のように。
「さぁ、始めましょう。」
――私は、”わたし”を、手に入れる。