彼に貰ったホットミルクは、熱すぎず温過ぎず美味しかった。


「……で、色々聞く前にコレつけて。」


私が一息ついたのを見計らって、懐から取り出したアンティーク仕立てのペンダントを目の前に突き出す。

不思議な形の鍵形のそれは、真ん中に何かの石が埋め込まれている。


「これは?」


ペンダントを受け取り、言われた通りに首から下げる。

寝かす時に外されたであろうネクタイと、調度同じ位置にトップが重なる。よかった、学校では隠せそう。


「まぁ、一言で言えば一種の結界みたいなものか。思念のストッパー、とか。」

「思念のストッパー?」

「俺には周りの人間の思念の声が直接聞こえるんだ。勿論それをつけてなかった今まであんたの思考はダダ漏れだった。」


何でもないように話す彼。
そういえば、防波堤でも今でも、確かに何も言っていないのに私の考える事は伝わっていたっけ……。



「…………オイ、それはどういうつもりだ」


言葉の意味を理解した私のとった行動。
それは、自分の肩を自分で抱くようにして、彼を警戒する姿勢。

彼の眉が上がり、苛々と私を見る。


「……だって、考えてる事がダダ漏れとか、覗きと同じじゃないっ! 私の思念変じゃなかった!?」

「あのなァ、こっちだって好きで覗いてる訳じゃないんだよ。こっちから言わせて貰えれば、俺が覗きなんじゃなくてあんたが脱いでるようなモンなんだよ。」