「……、」


目を覚まし、一番に見えたのは白い地に黒の囲いの天井。
私は真っ白なベッドに寝かされていた。

むくりと起き上がり、隣に置いてある勉強机を見れば、ノートや教科書と共に積まれた学生証が目に入る。


”1年C組10番 忍野透夜”


貼られた顔写真には、海で会った彼の顔。
そうか、私はあの後彼に運ばれたんだ。
とすると、ここは彼――忍野透夜の部屋、か。



「――ああ、気がついた」




私の右側に位置する扉の方向から聞こえたハスキーボイス。
その声に振り向けば、彼が部屋に入って来た所だった。


先程は気が回らなかったけど、よく見れば地元では有名な高偏差値の金持ち学校であるK学園の制服を着てる。

……って事は、この人も所謂お坊ちゃま?


「そんなどうでもいい事は置いといて。……よく寝れた?」


あーだこーだ考える私を一言で制し、気遣うように私の額に手を添える。
ヒヤリとした手が真夏の海の日焼けで火照った肌に気持ちいい。
…あれ、見た目よりも優しい、のかな?


「大きなお世話。その様子だと寝れたらしいね。」

「うん、ありがとう。」


彼は今持ってきたらしいホットミルクを私に渡すと、ベッド横にあった勉強机のチェアに腰掛ける。