「…安心しろ、助けるつもりも無いのにあんたに関わりはしない。」


顔を上げれば、一粒の涙が頬を伝う。
――泣いていたんだ。私は。


「ほんとに…?」


震える声で、問うた。

すると、彼がかけている眼鏡の奥の瞳が、冷たくもあるけれど微笑んだ気がして。

添えられた手が私の頭をゆっくりと撫でる。


「本当だ。だから、…安心しろ。守ってやる。」


その、言葉に。

安心なんて安い言葉では言い表せない程の感覚に、はりつめた緊張の糸からすべて解放されたような気がして。

腰が抜けたようにズルズルと道路に座り込むと、今度は意識さえ朦朧とし始める。


「……あ、ありがとう…っ、ありがとう…ございます…っ、私、わたし……っ!!」


「わかってる、少し休め。」


屈んで目線を合わしながら前髪をくしゃくしゃと撫でられると、力の抜けた私はだんだんと意識を手放していった。

最後に聞こえた、波と風の音も、優しく響くように。
そのまま、完全に私の視界はブラックアウトした。