持っていた鞄が、音を立てて彼の居る道路に落ちた。
グシャッと嫌な音を立てて。



「そんな…っ!」


今でも十二分に巻き込んでいるのに。これ以上、しかも死ぬことになるかもしれないなんて…。

(そんなの、ダメだ、)


――決まらない覚悟を決める時が、こんなにも早く来るなんて。

死ぬしかない。私は消えるしか――――


「――――無駄だ。裏界に触れてしまってから死のうとしても、あいつはあんたとのリンクを持ってんだぜ? 大方、死ぬ寸前に意識をもってかれてアウトだ。」


彼は告げる。

私には彼の言うアウトの意味がわからなかった。

でも………だけど。


”私の死は無駄に終わり、生きていても死んでも仁那や両親や兄弟も死んでしまう”、これだけは理解できた。


私は、どうしたらいいのか。


考えるより先に、思わず声を荒げて彼のもとへと小走りに向かう私。
そのまま彼の袖口をつかみながら、縋るように懇願した。


「おねがい、たすけて…っ! おねがい、おねが…、…。お願いします…っ!!」


彼の眼は、それでも変わらず冷たかった。
でも、頭を下げた私の後頭部に手を乗っけながら、あやすように言う。