ザ…サザ………

波の音が絶え間無く響いてはきえて、また響く。


山間へと夕日は吸い込まれ、西側の空から東へと茜色から紺へとグラデーションになって、星もちらほら現れ出した。


風は冷たく、潮のにおいに満ちている。
このまま風邪をひいては元も子もない。

ゆっくりと立ち上がり、深呼吸をする。
息をついた所で防波堤の上へと続く階段を登り、最上まで行くとまた海を見つめた。


(……、頑張れるだけ、頑張ろう。それでもダメだったら……。)


その覚悟が、私になくても。


答えは決まっている。もう、周りを巻き込みたくないから、私は消えなければいけないと。



ザワ、と街路樹の葉が風に鳴った。










「―――死ぬまでもない。」


ギクリと肩を強張らせた。
背後から聞こえたのは男の声。

低く、しっかりとした滑舌の…静かな冷たい声。


「あんたが覚悟を決めるまでに、確実にアイツはあんたを仕留める……確実に。」


カツリと革靴が地面を叩く音が、やけにはっきりと聞こえた。

私は前を見据えたまま、彼の言葉を待つ。


そして、次の瞬間。
彼は、私の心臓を射止めるように、こう言い放った。



「あんた、もうすぐ死ぬよ。」と。