逃げるように、私は階段を駆け降りて仁那から離れた。

背後から仁那の慌てた声が聞こえるけれど、その声をも振り切ってその場を後にする。


(ごめん、仁那。ごめん…)


心の中で、何度も何度も仁那に謝った。
伝わりはしないのに。


静かな廊下に響くのは自分の足音と、中庭や校庭から響く笑い声や掛け声。

みんな、楽しそう。

まるで、私だけ見えない壁に阻まれて、一人取り残されたみたい、だ。
自然と足も重くなる。

(………、やめよ)


ここで卑屈になってもどうしようもない。
私は急ぎ足に下駄箱へと向かった。