僕たちは久しぶりの再会を果たし、しばらく改札前でぎこちない挨拶を交した。

 十年以上ぶりに逢った彼女は学生時代の若い、はつらつとした感じから、大人の女性が持つしとやかさを感じさせ、仄かに香るフローラルの匂いに僕は一瞬、軽いめまいを感じた。

「もしよかったら、何処かでお茶でも…」

 格好良く決めようと思ったが、実際に口から出たのは安っぽいナンパ言葉で、僕は顔から火が出る思いだった。

「少しだけなら」

 期待していた彼女からの返事は予想以上の効果を僕の顔面と心臓に与え、ハートは爆発しそうなダメージを受けた反面、顔は決してクールとは言い難いほどのにやけ面を形作ることになってしまった。



 僕たちは駅を出て直ぐに目に入った喫茶店に腰を落ち着けた。

 二人してホットコーヒーを頼み、懐かしい高校生時代の思い出話しに華を咲かせる。

 会話の間中、気が付けば僕はずっと彼女に見とれていた。

 彼女の話し振り、髪をかき上げる仕草…全てがあの頃とフラッシュ・バックするかと言ったら、やはりそれは嘘になる。

 今となっては、それほどに遠い昔のコト。


 だけど、この気持ちだけは僕の心に変わらず残っていた。