八王子駅のホームに降り立ち、白い息を吐く。
 冬将軍は都会っ子の僕たちに、まだ雪の一欠片も落としてくれはしない。

 そして僕は階段を上がり、駅の出口へと向かった。





 改札口を出て辺りを見渡した僕の目に飛び込んで来たのは、懐かしい面影のある彼女だった。

 もしこの瞬間、神様がいると言うのなら信じてもいいと思った。

 彼女が今にも改札に吸い込まれようとしている。
 今このチャンスを逃したら次は無いと思った。

 三度目の正直と言うが、こんな偶然は三度も起きないだろうし、生憎と僕はそれほど信心深い方じゃない。
 先ほど信じかけた神様が次に気まぐれを起こしてくれるのを待つほど悠長な性格でもないし。

「徳山さん!」

 思わず僕は声を掛けていた。