その時だった。

「りっちゃん!」

コンクリート塊が飛び交う戦場のようなこの場に似つかわしくない、透き通るような声。

その声に。

「え…」

パニックに陥っていた璃月も我に返り、声のした方を見る。

「落ち着いて。私が来たからもう安心だよ」

そう言って声の主は、優しく璃月に語りかける。

「ここは私が引き受けるから。りっちゃんは先に逃げて?ね?」

「う、うん…」

冷静さを取り戻し、しかし狐につままれたような顔をして。

璃月は廊下を走り始めた。

「有り難う…アリスカ先輩」